■マコの傷跡■

■マコの傷跡■

chapter 14



~ chapter 14 “喧嘩” ~




私が高校2年になった頃、親戚の説得で母は一度、家に戻った。
また毎晩夫婦喧嘩の日々が続く。
母親の、動物が悲鳴をあげるような泣き声は
毎晩、私の全神経をひどく張り詰めさせた。
あまりにもひどくなると降りて行き「いい加減にして」と止める毎日だった。

ある日姉が「今日帰れないんだけど真琴、1人で大丈夫かなぁ・・・」と電話してきた。
「どうせいつもと同じだよ、適当にひどくなったら止めるから平気。」
その日に限って喧嘩はいつも以上に激しかった。
ベッドに入って布団を頭からかぶり目を閉じて耳をふさいだ。
しばらくそうやってじっとしていたが、
とても終わりそうにないので止めに降りて行く。

目に飛び込んできたのはパジャマがビリビリに破けた母親だった。
全身の力がへなへなと抜けた。
「なんでこんな・・・・」つぶやくように言った私の横を母が走り抜ける。
“逃げた”と思った。
それを捕まえようと父が追い、母のパジャマを掴む。
その拍子にパジャマが更に破けた。
「追うから逃げるんだよ!!」
逃げた母を追って私の前を通った父を掴んで止めようとした。
「違う!どきなさいっ!!」そう言って私は父に払いのけられた。
何が起こってるのかわからなかった。
父にはわかっていたのだった。母が台所に刃物を取りに走った事が。

母は包丁を自分に向け、「私さえ死ねばいいんだ」と泣きながら言い、
父に力づくで包丁を取り上げられていた。
“まじかよ・・・・勘弁してくれよ・・・”

その翌日から、寝る前には包丁やはさみなんかの刃物全て缶に入れ、
自分の部屋のベッドの下に隠した。
そうしてから、争う声に怯えながら布団をかぶった。


◆chapter 14について(日記) へ

◆chapter 15 へ



© Rakuten Group, Inc.